ひと夏の経験
もしこれを見てくださる方がいたら、しかもお食事中だったら ごめんなさい。 俳句を自分史代わりに書きとめている私は 身に降りかかったこの不幸を詠んでおかないわけにはいかなかったのです。

水虫や 家族の声の 遠のけり
その朝 私は新宿に行くため家を出ました。 なんか足に違和感を感じながらも町田駅に向かっていました。 何分もたたないうちに足は熱を持ち たちまちイタ痒くなってきたのです。 とても緊急を要する予感がした私は迷わず薬局に飛び込み 症状を話し、その場で 薬を塗布、 なんとか 新宿で用事を済ませ 一目散に帰宅、その足で皮膚科へ。  「水虫でしょう」 と 医者の一言。 私としては XXX風に言わせてもらうなら、 もっと深刻な 病名: 突発性激痛爆痒無理我慢疎遠人々後恥症候群、これでも言葉足りない位でした。

帰宅した娘は、すれ違うのに横にならなければならないような狭い我が家の廊下で 「お母さんは出来るだけそっち側だけ、歩いてよ!」、 主人は 「お前のスリッパはこれ。 これ以外は履くなよ」 と 冷たい言葉。

なぜ、何処で? 何時から私にとりついたんだろう? 思い当たるのは Tスポーツクラブ。 年取ると脚にくるということを恐れた私は せっせと水中エアロなるものに励んでいた。 そのクラブはプールから上がると出口に大きな布マットが敷いてあり、 私はこれが大嫌いなのに飛び越えて出ることは出来ないようになっていたのです。

しかし、 この出来事は久々に私の作句欲を高揚させました。 確かに一番大事と日ごろ云われている ”詩因” は好くないけれど 出来るだけしみじみと、深く、美しく、詠めたと思い、 意気揚々と句会に。 でも、結果は惨憺たるもの、 「や〜 ねー」 「誰、これ?」 「わー いやだ〜」 で 一点も入らず、 心なしか 帰りには皆 私を避けているような、

でも、 皆さ〜ん −! (誰も聞いてないか〜) ”水虫” は歳時記に載っている立派な(立派かどうか私も自信がないけど〜) 夏の季語なんです。 例句も とっても少なく、 あまり日の目を見ることもない 日陰者でとても気の毒な存在なのです。 私は 水虫君にスポットライトを当ててあげ、 「私はなんて良い奴なんだ!」 と 大いに満足して句会にのぞんだのにー。

最後にこれだけは 書いておかねば、 熱しやすく醒め易い私と水虫君との破局はたちまちおとずれました。 「症状が治まってもしばらくは薬をつけておくように」 との医者の言葉でした。 彼は以外にしつこいらしいです。


♪涙くんサヨナラ♪(坂本 九)  ♪水虫君さよなら♪(QQ)

水虫君 さよなら、 サヨナラ水虫君 もう逢わないよ♪
君は私熱くした とぉーても、とっても熱くした、でも足だけなのよ胸はときめかない♪
それに 周り猛反対 しかとに蔑視にあざ笑い だから これえっきり 逢わずに暮らそうよ〜。

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